- 中国語の勉強を始めるにあたっての注意点を知りたい
- 中国語の種類がいろいろあって、どれを勉強したらいいかわからない
- 中国語の習得が本当に日本人に有利なのか確かめたい
いざ中国語の勉強を始めようと思っても、
「情報が多すぎて何から始めれば良いかわからない」
「せっかく始めるなら失敗しない方法を知りたい」
とお悩みの方も多いと思います。
こうした悩みを解決するには、勉強を始める前の時点で、次の2つを理解しておく必要があります。
- 中国語にはいろいろな種類があるため、目的に合ったものを勉強する必要がある
- 日本人は、中国語の習得に有利な点もあるが、不利な点もある
この2つを理解しないまま勉強を始めると、非効率な学習方法を選択したり、途中で挫折したりする危険性が高くなってしまいます。
この記事では、中国駐在経験を有する筆者が、中国語初心者の方に向けて、勉強を始める前に知っておくべき2つの注意点を解説します。
この記事を書いた人
- 中国語を使う仕事に従事する30代サラリーマン
- 30歳の時に全くのゼロから中国語の勉強を開始
- 勉強開始から3年で駐在員として中国へ派遣
- 3年間の駐在生活で“リアルな中国”を体験
この記事を書いた人
- 中国語を使う仕事に従事する30代サラリーマン
- 30歳の時に全くのゼロから中国語の勉強を開始
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- 3年間の駐在生活で“リアルな中国”を体験
この記事では、中国語初心者が最初に知っておくべき情報を、分かりやすく解説するよう心掛けています。
余計な情報は可能な限りカットしていますので、ムダなく次のステップに進むことができます。
- 中国語の種類とその特徴
- 初心者はどの中国語を勉強すべきか
- 中国語習得で日本人に有利な点と不利な点
- 中国語初心者が気をつけるべきこと
自分の目的に合った中国語を勉強する必要がある
中国語は、中国本土だけでなく、台湾やシンガポールなどでも公用語として使われている言語です。
しかし、一口に「中国語」と言っても、厳密にはたくさんの種類が存在します。
そのため、これから中国語の勉強を始める方は、
「どの地域に行きたいのか」
「どの地域の人と交流したいのか」
「どの地域の映画・ドラマを観たいのか」
といった、自分の目的に合った中国語を勉強する必要があります。
なぜなら、中国語の種類によって、字の形や発音、表現の仕方などが大きく異なるためです。
これから中国語を始める方は、この記事で解説する中国語の種類について理解した上で、自分の目的に合った中国語を勉強するようにしましょう。
中国語には「簡体字」と「繁体字」がある
中国語は漢字を使う言語ですが、字の形によって、「簡体字」と「繁体字」の2種類に分けられます。
「簡体字」は、中国政府が、国民の識字率を高めるため、「繁体字」を簡略化し覚えやすくした新しい字体です。
「繁体字」は、画数の多いのが特徴で、中国語の伝統的な字体です。
簡体字 | 日本語 | 繁体字 |
---|---|---|
欢迎 | 歓迎 | 歡迎 |
会议 | 会議 | 會議 |
そして、どちらの漢字を使うかは、地域によって異なります。
【簡体字】 主に中国本土、シンガポール、マレーシアで使用
【繁体字】 主に台湾、香港、マカオで使用
※ シンガポールとマレーシアでは、一部で繁体字も使用されています
また、「簡体字」と「繁体字」は、字の形だけでなく、意味などが異なる場合もあるので、注意が必要です。
簡体字 | 日本語 | 繁体字 |
---|---|---|
出租车 | タクシー | 計程車 |
信息 | 情報 | 資訊 |
地铁 | 地下鉄 | 捷運 |
中国語には方言と標準語「普通話」がある
中国語には、北京語や上海語、広東語といった方言と、「普通話」と呼ばれる標準語が存在します。
中国語の方言は、細かいものを含めると膨大な数になりますが、大きく次の7つに分けられます。
【北方語(ほっぽうご)】 北京語、東北語、成都語、南京語など
【呉語(ごご)】 上海語、蘇州語など
【粤語(えつご)】 広東語
【贛語(かんご)】 江西語、南昌語など
【湘語(しょうご)】 長沙語など
【閩語(びんご)】 福建語など
【客家語(はっかご)】 客家人が使用
どの方言も、基本的に「簡体字」を使用する点では共通しています。
しかし、発音や表現方法などが大きく異なるため、全く別の言語に感じるほどの違いがあります。
私も、中国滞在中は、方言同士の会話を聞くことがよくありましたが、全くと言っていいほど聞き取れませんでした。
これは外国人に限った話ではなく、同じ中国人同士であっても、別の地域の方言はほとんど理解できません。
こうした問題を解決するため、中国では、政府の主導で、標準語である「普通話」の普及が進められています。
「普通話」は、
① 北京語の発音
② 北方方言の言葉
③ 現代口語文の著作物の文法
の3つを基礎として作られた標準語です。
中国では、学校教育などを通して、「普通話」の普及が進められています。
中国政府の発表によると、普及率は2022年時点で80%を超えています。
実際、中国で生活していて、「普通話」が通じない場面に遭遇したことはありません。
このように、中国本土では、大半の中国人が標準語である「普通話」を話すことができます。
そのため、「普通話」を勉強しておけば、ほぼ全ての中国人とコミュニケーションをとることができるのです。
初心者は「簡体字」の「普通話」を勉強した方が良い
ここまで、中国語の「簡体字」と「繁体字」の違いや方言と標準語の違いについて解説してきました。
「台湾の大学に留学することが決まっている」
「中国の農村地域で暮らすため、現地の言葉を習得する必要がある」
といった具体的な勉強の目的がある場合は、その目的に合う中国語を選んでください。
しかし、このような明確な目的が無ければ、「簡体字」の「普通話」を勉強することを強くおすすめします。
なぜなら、「普通話」の勉強には、次の3つのメリットがあるためです。
- 中国本土では「普通話」だけで生活できる
- 「繁体字」を使う台湾や香港でも通用する
- 教材や語学教室などの勉強手段が豊富にある
①中国本土では「普通話」だけで生活できる
中国本土で大半の中国人に「普通話」が通じることは、こちらで解説しました。
私も中国駐在中は、「普通話」だけで、いろいろな地方の出身者と問題なく意思の疎通ができました。
②「繁体字」を使う台湾や香港でも通用する
こちらで説明したとおり、台湾や香港では「繁体字」が使われています。
しかし、実際は、「普通話」さえ話すことができれば、台湾や香港でも会話にはほとんど困りません。
その理由は、以下のとおりです。
- 台湾の標準語である「台湾華語」は「普通話」との共通点が多い
- 香港では「普通話」が公用語に含まれていて普及率も50%を超えている
- 台湾と香港は、中国本土との人の行き来がとても活発である
- 中国本土出身の方がたくさん生活している
つまり、台湾と香港では、多くの人が「簡体字」の「普通話」に慣れているのです。
③教材や語学教室などの勉強手段が豊富にある
中国語のテキストや中国語教室は、大半が「簡体字」の「普通話」を扱ったものです。
そのため、たくさんあるテキストや教室の中から、“質の高いもの”“自分に合ったもの”を選ぶことができます。
これは、「普通話」を勉強する大きなメリットになります。
また、他の中国語と異なり、「普通話」に関しては、たくさんの解説記事や動画がネット上に存在します。
数多くの情報の中から、自分に役立つ情報を見つけやすい点も、メリットの1つです。
このように、「簡体字」の「普通話」は、初心者にとってコストパフォーマンスが高く、勉強しやすい中国語です。
「台湾で生活したい」といった特別な理由がない限り、これから中国語の勉強を始める方は、「簡体字」の「普通話」を勉強するようにしましょう。
日本人学習者にとって有利な点と不利な点がある
ここまでは、中国語の種類とその特徴や、どの中国語を勉強すべきかについて解説してきました。
この項目では、日本人が中国語を勉強する場合の有利な点と不利な点について解説していきます。
特に、これから中国語の勉強を始める方は、日本人に不利な点を最初から知っておくと、心の準備と失敗しないための対策ができます。
有利な点:日本語と同じ漢字がある
不利な点:日本語にない発音がある
有利な点:日本語と同じ漢字がある
中国語には、下の表のように、日本語と同じか似たような漢字が多く使われています。
日本語 | 中国語 |
---|---|
文化 | 文化 |
学生 | 学生 |
首都 | 首都 |
そのため、日本人は、文章を見ただけである程度の意味をつかむことができます。
これは、欧米人などと比べると大きなアドバンテージとなります。
ただし、日本語と中国語では意味や発音が異なる場合があるという点には注意が必要です。
実は、先ほどの表で紹介した3組の漢字の意味は同じですが、発音は日本語と中国語で全く違います。
加えて、下表のように、日本語と同じ漢字なのに意味は異なるパターンもあります。
日本語 | 中国語 |
---|---|
地道 | 地道(本場の、地元の) |
迷惑 | 迷惑(戸惑う、惑わす) |
怪我 | 怪我(私を責める) |
特に、発音は全く別物と考えるようにしてください。
後述しますが、中国語は発音の正確さが求められる言語です。
日本語と似たような発音の中国語もありますが、日本語式の発音ではなく、中国語式の発音をしっかりと覚えるようにしてください。
不利な点:日本語にない発音がある
中国語は、漢字を使うため、日本人にとって勉強しやすい言語です。
しかし、注意してほしいのは、“中国語には日本語にない発音がたくさんあるため、習得するのに苦労する”という点です。
私も、何度も挫折しそうになるくらい苦労しましたし、私の周りの中国語上級者も、
「中国語の最大の難関は発音」
との認識で全員一致しています。
中国語の発音は、専門の解説本が何種類も出されるほど、勉強すべき内容がたくさんあります。
この記事では、勉強を始める前の段階で理解しておくべき2点にしぼって解説します。
- 中国語の音節は日本語の4倍以上ある
- 中国語は音の上げ下げで意味が変わる
①中国語の音節は日本語の4倍以上ある
1つ目は、音節(ひとまとまりの音。「か」や「ば」など)の数についてです。
諸説ありますが、中国語は、母音が36個、子音が21個あり、これらを組み合わせた音節の数が、400余りになります。
一方、日本語は、100〜150ほどなので、その差は歴然です。
これだけ多くの日本語に無い音節を全て覚えた上で、無意識に発音できるようになる必要があるため、日本人は発音の習得に苦労するのです。
②中国語は音の上げ下げで意味が変わる
2つ目は、中国語の大きな特徴である「声調(四声)」についてです。
「声調」とは、アクセントやイントネーションのようなものです。
中国語は、約400個の音節を発音する時に、下図のような4パターンの音の上げ下げを行う必要があります。
注意しなければならないのは、同じ音節でも、音の上げ下げ(声調変化)によって意味が変わるという点です。
例えば、あなたが「ma」という音節を発音したとします(日本語のマに近い発音です)。
その時の音の上げ下げによって、下表のように、聞き手が受け取る意味も変わってしまうのです。
第一声 | 第二声 | 第三声 | 第四声 |
mā | má | mǎ | mà |
妈 (お母さん) | 麻 (麻) | 马 (馬) | 骂 (叱る、ののしる) |
中国語には、音節が約400個、声調が4パターンありますので、単純計算すると、約1,600通りの発音が存在することになります。
音の上げ下げで意味が変わるということは、約1,600通りの発音を、正しく聞き分けて、正しく使い分けなければなならないということです。
そのため、日本人学習者にとって、「中国語の最大の難関は発音」と言われているのです。
中国語は、正しい発音で話さなければ、スムーズな会話はできません。
私も中国で生活していた時は、相手から繰り返し聞き返されたり、結局通じなくて翻訳アプリを使われたり、といった経験を何度もしました。
確かに、中国語は、一部で日本語と同じ漢字が使われているため、日本人が勉強しやすい言語です。
しかし、中国語で最も重要な発音には、日本語に無い要素がたくさんあるため、時間をかけて努力する必要があります。
最初にそのことをしっかりと理解していれば、簡単に挫折するようなことにはならないはずです。
まとめ
この記事では、中国語初心者の方のために、中国語の勉強を始める前の注意点として、
の2点について解説しました。
初心者の方は、特別な理由が無い限り、ほぼ全ての中国人に通じる「簡体字」の「普通話」を勉強するようにしてください。
そして、発音が「最も重要」であり、日本人にとって「最大の難関」であるということをしっかりと頭に入れてから、勉強を始めるようにしてください。
そうすることで、初心者が序盤で挫折する危険性を大きく下げることができるはずです。
この記事が、皆様の目標実現のために、少しでもお役に立てれば幸いです。